2025/01/12 13:43
忘れもしない西川孝次さんのガラスとの出会いは、大阪日本民芸館の売店にあった深い青のグラスでした。その青は僕の一番好きな鳥取県岩美町の海に潜った際の揺らぎのある深い海の青と同じでたちまち心奪われました。混ざり合った複雑で美しい色、大胆かつ繊細な形、今まで見てきたガラスとはひと味もふた味も違い、たちまち西川さんのガラスの虜になりました。

広島県生口島生まれの西川さんは造船業に就職したのち、倉敷ガラスの小谷真三さんの仕事をする姿に感銘を受けガラスの道を志します。返還間もない沖縄の牧港ガラス工房で働き、1980年に独立。コロナ禍前までは沖縄と広島の2拠点で工房を構えていた時期もありました。その頃はわざわざ鹿児島まで陸路で行き、船で沖縄の工房に向かっていたそうです。今でも時間があれば旅に出かけ、旅が人生の楽しみだそうです。

西川さんの唯一無二のガラスは今までの経験をもとに作られています。造船で培った技術と沖縄のないものは自ら作る精神で、自身で鉄の型を作ります。ぼこぼこして持ちやすく可愛らしい形のあられのグラスや、すっと美しい佇まいの瓶は、型を自ら作ることでイメージ通りの形となります。また西川さんのガラスは種類が非常に多く、新しい形を見るたびにその素晴らしさに毎回驚かされます。そういった感性は旅の自然や暮らし、人の出会いや触れ合いにより育まれるそうです。

西川さんのグラスは、口当たりがよく持ちやすく、光の加減とともに変わる表情が素敵で、その心地よさに心躍ります。4歳の息子も大ファンで、小ぶりのグラスを楽しそうに選んで使っています。またリキュール瓶や花差しはその美しさに魅了されます。そして暮らしを愉しく彩ってくれます。使うための美しさに加え、純粋にものとしての美しさを兼ね備えている西川さんのガラスは、用の美のその先を見せてくれるかのようです。
1980年に独立し、今年で45周年の西川さん。 積み重ねてきた技術と経験、輝き続ける感性で作り上げた50の硝子をどうぞご覧ください。
鳥取たくみ工芸店 田中 司