鳥取たくみ工芸店

2024/03/11 12:15

 当たり前が一番むずかしい。こちらの方がいいとわかっていても、手間や効率を考えてしまい簡略化してしまいます。そんな中手間暇惜しまず黙々と仕事に向かうのが、湯梨浜町で工房を構える木工職人朝倉康登さんです。

 朝倉さんの器やカトラリーは、地元で育った桜を使っています。理由は簡単。口に付けるものは安心安全なものがいいから。市場で売買される木材は建材が多いこともあって防腐材が入っているものが多々あるそうです。そんな中朝倉さんは地元の森で育った桜を原木で譲り受け、数年かけてじっくりと乾燥させたのち加工します。朝倉さんの代表的である”削る仕事”。一つ一つノミで削り出し木の表面は光沢がありつるっとしています。多くの木工品は機械を使ってサンドペーパーで木を磨いて仕上げますが、そうすると木の繊維をつぶすことになります。ノミを使い繊維を切ることで水はじきがよく長持ちします。また彫り痕の凹凸は心地よく手になじみ、持ちやすいです。

 こうして出来上がった器は、とても軽く、しかも丈夫で、使えば使うほど味わいが増してきます。朝倉さんに我が子の誕生祝いに頂いたパン皿はいい色になってきました。日々愛用し器とともに育っています。

 このような姿勢は仕事に限ったことではありません。春になれば近くの山で梅を積んで梅干しを作り、冬の季節はカレイを干し、仕事で出た桜の端材を使って自作のピザ釜で燻製にするとのこと。当たり前のことを選択し、暮らしを営む朝倉さんの姿はとても素敵ですし、自然と応援したくなります。
 そんな朝倉康登さんの二年ぶりとなる展示会が鳥取たくみ工芸店で開催されます。日々を豊かにする木の仕事が一堂に並びます。どうぞご覧ください。