鳥取たくみ工芸店

2022/08/23 17:17


 「人事を尽くして天命を待つ」

 昨年の登り窯の窯焚き直前に山下清志さんが語った言葉です。最善を尽くし後は委ねる。まさに延興寺窯らしい言葉です。


 今から44年前、兄碩夫さんと浦富焼を再興し磁器を作っていた清志さんは、自らの窯を開くことを決意。岩美町の山合いにある延興寺の土と出会い陶器を作り始めました。田んぼの畦道をご夫婦二人で煉瓦を運び、登り窯を築いたそうです。瀬戸や有田などの焼き物の産地は、歴史もあるためノウハウが蓄積されています。しかし延興寺窯はまさしくゼロ

からのスタートで試行錯誤の連続でした。その中でも信念を曲げず真摯に取り組む姿勢に、自然と協力の輪は広がっていきました。


 代表的な例が土です。清志さん曰く一級品の土ではない延興寺の土は、火に弱いため苦慮しながら作陶していました。そんな中とある縁で頂いた新たな土を混ぜることで、安定して器を焼けるようになりました。その土は対岸の土で、この集落は川を挟んで土の質が変わる珍しい土地だということが分かったのです。


 生前、鳥取民藝の師、吉田璋也は「兄は磁器、弟は陶器」と語っていたそうです。導かれるように延興寺の地を選び、現在は娘の裕代さんとともに作陶している延興寺窯。民藝本来の形を探求し、自らの手で土を掘り、沢山の工程を経て大地の土が陶土となります。「私たちが土に合わせているんです」と語る清志さん。自然に寄り添い作られた延興寺窯の器は私たちの暮らしに自然と寄り添ってくれます。


 今年も登り窯から生まれた器たちが16日から鳥取たくみ工芸店に並びます。登り窯の窯焚きは、窯の癖、天候等に影響を受けやすく、窯に委ねるしかありません。まさに「人事を尽くして天命を待つ」。どのような器に出会えるか楽しみです。

 44回目となる延興寺窯展。どうぞご覧くださいませ。


延興寺窯
会期:9月16日(金)〜9月26日(月) 水曜定休
時間:AM10:00からPM18:00
会場:鳥取たくみ工芸店2F
   〒680-0831 鳥取県鳥取市栄町651
   TEL:0857-26-2367
   MAIL:t.mingei@gmail.com

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