鳥取たくみ工芸店

2022/06/11 16:29

 美しさを表現するには様々な言葉があるが石飛勝久さん、勲さんの器は凛としたという言葉が似合っている。白と呉須を基調としシンプルで潔い佇まいだ。そして芯のある形が美しい。しかし凛とした中にもそれぞれ印象が違う。一つ屋根の下で生活し、隣り合って作陶し、同じ陶石を使っているにもかかわらず勝久さんは力強さを、勲さんは優しさを感じる。なぜだろうか。

 島根県雲南市三刀屋、田畑が美しい里山にお二人で営む工房がある。住居と工房ともに漆喰の壁が印象的で、建物の美しさに思わず息を飲む。それもそのはず、この建物は勝久さんの師、上田恒次に助言をもらい建てたそうだ。上田恒次は民藝運動の中心人物河井寛次郎に師事した陶芸家で、建築にも造詣が深く自身が設計した自邸は国の登録有形文化財となっている。勝久さんは思春期の17歳から自邸に住み込み、上田恒次の一番弟子として18年間陶芸を学んだ。朝の掃除から始まり、畑の世話、食事などまさに衣食住を共にすることで陶芸だけではなく、暮らし方そして生き方を学んだそうだ。勝久さんは今年で81歳。暮らしの中に陶芸が息づいており日々仕事に向かい続けている。謙虚で言葉少なな勝久さんだが陶芸に対する姿勢や生き様を器が語っているようだ。

 勝久さんの息子である勲さん。家では民藝の器を使い、休みの日は勝久さんに連れられ民藝店や美術画廊に行ったりとまさに民藝に囲まれて育った。高校卒業後陶芸の道に進み、勝久さんの元で仕事をはじめた。勲さんは勝久さんのほか島根県の民窯の先輩方からも陶芸を学んだそうだ。勲さんの代表的な仕事の一つマグカップ。持ちやすいハンドルは出西窯の創設者の一人で民藝運動の中心人物バーナード・リーチから指導を受けた多々納弘光から学んだそうだ。また出西窯での数を作る職人仕事で作陶の正確さを得ることができた。軽くするためギリギリまで削ったマグカップは日光にかざすとうっすらと光を感じる程だ。柔らかく美しい曲線に器の軽さが勲さんの特徴だ。

 そして6月17日より鳥取たくみ工芸店では初となる石飛勝久さん、勲さんの展示会が行われます。
陶歴65年の集大成ともいえる勝久さんの今の仕事と、日々の暮らしの良きパートナーとなる勲さんの仕事が一堂に並びます。
凛とした美しさを持つ石飛さんの器を是非ご覧くださいませ。