鳥取たくみ工芸店

2022/03/17 16:19

ガッ ガッ ガッ
小気味良い音が響く。ここは木工作家・朝倉康登さんの工房だ。音の正体は桜の木のお皿をノミで削る音だ。そしていい木の香りが鼻をくすぐる。朝倉さんの木工品はカトラリー、お皿、へら、スツール、家具など多岐に渡るが”削る仕事”が代表的な形だ。ヤスリで磨くのと比べてノミや刃物で削ると面が滑らかで水はじきがよく食器に適しているそうだ。手仕事による細かい彫り痕が残る木肌は光り輝き美しい仕上がりだ。

 朝倉さんが作るカトラリーやお皿などの小木工は県内産の桜を使っている。これは山の手入れをした時に切り出されたもので、曲がっていたりして商品価値がなくチップにされるものを原木で譲り受けたものだ。独立した当初に材料費の節約するため使いだしたが、原木から製材し数年かけて乾燥するという一連の流れを身をもって経験することで作り手として大きく成長できたそうだ。そして木の個性を見極めて余すことなく使うことができるようになった。
「子どもがガジガジかじってもいいものを作りたいです。そのために手間ですが信頼できる近くの森の木を使います。」
と語る朝倉さん。子どもに優しいものはみんなにも優しいのだ。

 朝倉さんは最近では珍しく独学で木工を始めたそうだ。これはスケボーによるところが大きい。中学生の時から魅了されスケボーの部活がある県外の高校に進学したほどだ。スケボーは構造物と対峙しどう乗りこなすかイメージし成功するまで何度も挑戦し続ける己との勝負だ。乗りこなし方は自由で皆がそれぞれのスタイルを尊重し認め合う文化だ。このような環境で過ごしたことから木工でも自然と自分のくらしで使いたいものをまずイメージし、作っては使うを繰り返し、時には先輩職人のアドバイスに耳を傾け理想のものに仕上げていくようになった。こうすることで朝倉さんらしい独自の形が生まれるのだ。

 こうして作られた木工品は彫り痕の凹凸が心地よく手になじむものばかりだ。そしてジーンズのように使えば使うほど木の色が味わい深く濃くなり自分色に育っていく楽しみがある。
 そんな朝倉康登さんの鳥取たくみ工芸店初の個展が開催されます。ぜひご覧くださいませ。