鳥取たくみ工芸店

2021/07/27 10:43

 「用の美」
 暮らしに根ざし使うために作られたものに対する美しさを指す言葉だ。その「用」にこだわり暮らしに寄り添う延興寺窯の器は、和食・洋食・中華・エスニックなど様々な料理を受け止めてくれる頼りになる器だ。

 6月初旬、そんな延興寺窯の窯焚きにお邪魔することにした。登り窯は3つ焼成室があり焚き口から薪をくべ時間をかけて温度をじっくりあげていく。山下清志さんが「いよいよ勝負だ」とおっしゃったのは開始から約9時間。1の間を図る温度計は1200度に達していた。そこから窯に入れる薪の数を娘の裕代さんと確認、調整しながら1300度を目指し徐々に徐々に温度を上げてゆく。そして最後は温度計ではなく自らの目が頼りだ。清志さんが1の間の小さな穴に棒を入れると真っ赤に輝く小さな器が出てきた。何度か確認して4つ目でやっと納得する出来に。そこから間髪入れず2の間に移り窯焚きは続く。すべてが焚き終わったのが朝6時だった。

 長時間高温の中にも関わらず、涼やかな表情でそつのない動きをするお2人。窯や炎そして自然と一体化しているようだった。そして延興寺窯の器の特徴である自然で落ち着いた風合いと無駄のない形は、日頃の鍛錬だけでなく作り手の人柄が滲み出て出来上がったものだと感じた。

 延興寺窯では作陶するにあたって大切にされていることがある。1つ目がその土地のものを使うこと。土、籾、石などの自然の恵みを使うことでここならでは器ができる。そして古作から学ぶことだ。現在の多様化したライフスタイルでは多様な使い方、即ち「用」が存在する。山下さんは様々な年代の古作を見ることでの普遍的な美を読み取るそうだ。そして、今の暮らしを見つめながら形を展開してゆく。こうして延興寺窯ならではの日々の暮らしを潤す器が産み出されてゆくのだ。

 暮らしに寄り添う「用の美」を体現した器が一堂に揃う「延興寺窯展」。 是非ご覧ください。

延興寺窯
会期:7月30日(金)〜8月9日(月)
時間:AM10:00からPM18:00
会場:鳥取たくみ工芸店2F
   〒680-0831 鳥取県鳥取市栄町651
   TEL:0857-26-2367
   MAIL:t.mingei@gmail.com

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